『……………來哉。』
エンジンをかけたら、昨日も聞いた懐かしい低いエンジン音が他のエンジン音と混ざり響く。
來哉は私に視線だけ寄越しながらエンジンをかけた。
『……接触事故と、殺人。
人を殺めてしまうのは一緒の意味なのに、何で刑の重さと心は違うと思う?』
事故なら、仕方がない。
人殺しなら、許せない。
そんな矛盾した人間の感情と言うモノは、
どうやって構築されていると思う?
私には、解らない。
事故でもきっと、恨む人も居る。
なのに。
私の深みに堕ちる思考を遮断するかの様に來哉が言葉を放った。
「人を殺める事自体が悪いが、
その人の気持ちがどんなモノかで、色々変わるんじゃねぇのか?」
來哉はそう言ってバイクに跨った。
『…………解らない』
來哉は私に視線も寄越さず前だけを見て呟いた。
「ーー解らない事があるのが、人間だ。」
そのまま私に「行くぞ」と言う。
私は黙ってバイクに跨った。
ソレを見た來哉は大きく口を開いて声を発した。
「行くぞ‼」
「「「「おぉぉおお‼」」」」
威勢のいい声を最後に倉庫を一斉に出た。

