ピンポーン
バスルームから出て髪を乾かしているとインターホンが鳴った。
『まだ準備出来てないから入って』
來哉は画面越しにこくりと頷きさっき解除したセキュリティを潜って行った。
私はドライヤーを片付けてクローゼットに手を伸ばした。
…別に洒落込んでも何にもならないし。
私は1番上にあったTシャツと1番上にあったダメージのスキニージーンズに1番上にあった黒のパーカーを着た。
ガチャリと音がしたから、部屋に來哉が来たのだろう。
私は携帯、財布と煙草とジッポーをポケットの中に突っ込んで部屋の外に出た。
リビングには來哉が突っ立っていた。
『座れば良かったのに』
クスリと笑うと、來哉はムッと眉間にシワを寄せて「すぐ行くだろ」と言った。
まぁ、確かにそうだけど。
私は鍵を持って外に出て、來哉もそれに続いた。
マンションの前には大きな黒に青のラインが2本、交わる様に入っていた。
『へー、かっこいいな。
來哉の?』
「あぁ……」
『私も持って来るね』
マンションの傍にあるシャッターのついた倉庫に暗証番号を打ち込んで開ける。
そこには私のバイク。
昨日結構やったから大丈夫だろう。
「……お前のもかっけぇな」
來哉は目を細めながら呟いた。
『まぁね』
私はそうとだけ返してキーをさしてエンジンをかけた。
低く唸るバイクの音に背中がゾクゾクとした。
來哉も既にエンジンをつけていて、もうメットをつけて跨っている。
早…
私は関心しながら呆れていた。
私もメットを被り、バイクに跨った。
「行くぞ」
來哉はそう言って走り出した。
私もその後に続いてバイクを走らせた。
あぁ、
全てが懐かしい……………
私は風を感じながらハンドルを握る力を強めた。

