私は暴走の前日、紘とバイクを整備していた。



紘のバイクも私と同じで黒のボディに赤のラインが入っている。



「はー。


結構放っとくと錆びるモンだな」



紘は額に浮かんだ汗を服の袖で拭った。



もう夏も近くなってきている。



生温い風を肌に感じながらバイクを撫でた。




ーーーーピタ



『っ‼』


頬に冷たい何かが触れて、振り向いたら紘が少し氷のついたペットボトルを持っていた。



「琉稀は紅茶好きだったよね?」



『……………あぁ』



私はオイルで黒く汚れた手をタオルで拭いて紅茶のペットボトルを受け取った。



「結構体力いるもんだな」


『あぁ……


年をとったか?』


「まだ17だけど」



私はバイクの部品1つ1つを見るだけで体が熱くなっていた。




『……やっぱバイクはいいね』





私は目を瞑って寝転がった。



紘も私の隣に寝転がった。



「……………暴走って初めてだな」



『…そだね』


3人で走りに行くのはあったけど、暴走は無かった。



別に行く機会も無かったし。









「……何か、怖えな」











……やっぱり、紘も?