かなり無理な体勢で、彼の胸板に頬を擦り寄せた。
痛いぐらいの姿勢。でも、頬から伝わる温もりで幸せ気分。
「『そうなりたい』って、心臓が言ってるね」
「人の気持ちを見透かすな」
バクバクな心音。私も同じで、それだけ相手を求めている。
「遅刻も欠席もしないと誓え」
「誓う誓う」
「……」
「しないよ。あなたに嫌われたくないもの」
「き、嫌うだなんて、そんなワケあるかっ」
「だよねー、あなたは私に、ぞっこんだから」
「苛つくことを言うな」
「なのに、私を離さないんだから、あなたはもう虜だねっ」
「っっー」
返す言葉が見つからない彼だが、離さない腕が答えを出す。
私もこの人に虜だ。
月が綺麗なこの場所で、『私は死んでも構いません』と言いたくなり、その意味を鮮明に分かってしまうほど。


