「あなたが会社でセクハラされてないか、心配」
「要らん心配だ。……それよか」
「ん?」
「お前は……」
「逆にセクハラしてますっ」
「心配した俺が馬鹿みたいだ……」
「馬鹿じゃないよ、嬉しいよ」
「意味を汲み取れない文章だな」
「主語なし文章は、正直な気持ちだけなんだよ」
理屈要らずの感情。こうして、あなたの隣にいるだけで嬉しいのに、あなたはいつも私の笑顔を望むから。
「月が綺麗ですね、って言える場所まで来たねー」
今日は満月。
月夜に提灯は、周りの明かりがないからこそ、より実感できるんだ。
「お前がうるさいからだ」
車を停めた彼が、自由になった両手で私を抱きしめる。


