「ところで、どうして俺が見てるってわかったんすか?」

と、どうしても気になって訊いてみたら。

彼女は横に座らせている猫並みに、きゅっと目をいたずらげに細めて言った。

「だって私、アナタのこと前から知ってるもの」

「え?」

一瞬の、運命のようなものを期待した俺は、

「私もあそこのアパート、住んでるんだから」

「ぇ゛っ」

「いっつも窓からカメラ構えてる人なんて、すぐに覚えるわよ。近所じゃあそこ、カメラアパートって呼ばれるくらい、アナタ有名だしね」

「……そっすか」

結局、現実はいつもそんなもんなんだって、苦笑して、

「って、同じアパート!?」

「そよ? 私一階、君二階。こないだ越してきたの、よろしくね」

いや。意外と現実も、刺激的なのかもしれない……。