悲しい。


 人魚が姿を見せない土地。そこへ入ると、やはり誰もが居心地悪げに一瞬眉を潜めた。
 数日前と様子か違う海は、例えるなら怒りだ。まだ薄暗く、海面の波は大きくうねる。荒れた姿を見せた。



「お前達は村の近くで船を探せ。私は村に」

「―――大丈夫か?」

「ああ」




 合流したハレンに頷き、私は見慣れた浜へとあがる。尾鰭が完全な足となるまでのわずかな時間さえおしかった。
 今は、前に前にと進む。荒れた海では進めない。小屋に滑り込むように入り、残していた衣服に袖を通す。レトが「こっちにも着替え置いた方が便利でしょう」と前に置いたのだ。



 髪を紐で結い、小屋を出る。