「レトー!」





 村へと続く道から、跳ねるようにして来たのは、この頃めっきり美人となったリンだった。
 花の柄入りの衣をゆらし、手には何か持っていた。砂浜から私もリンに近づくと、その手には饅頭「私の力作よ」





「さすがリン様」

「大袈裟ねぇ」





 青色が揺れるのを前に、リンと私は砂浜の上に腰を下ろした。
 リンは村に住む、私と年の近い友人だ。私が知っている子の中では一番料理の腕が良い。故にいつも彼女は料理担当だ。





「余った材料でおやつを作ったの」

「うまっ」

「でしょ?」






 つい数年前のことだ。

 隣国で内戦が起こり、その結果頂点に立った者と、私たちがいる国とが統合されたのである。隣国とはいえ元は一つの国であったらしいのだが、私は昔話でしか知らず、詳しい歴史背景はわからない。

 荒れた隣国の内戦は多くの死者を出した。こちらに逃げてきたというのも少なくない。リンもその一人である。
 今は統合され一つの国となり、荒れた土地もだいぶ元の姿を取り戻してきているというが、親を亡くした子は多く残る。リンは運よく逃れ来て、この村の長にひきとられた。