結局、あの後も純さんの言葉巧みな言動に負けて、ズルズルと何時間も一緒にいるハメになった。

そんな中で、どうして私の事をそんなに詳しく知っているのかと問いただすと。


『あれ? 当たってた?』


と、悪気も無くそう言うもんだから、思わず殴りかかりそうになった。

それでも、そんな私を見て。


『冗談、冗談。何回か美咲と飲む機会があって、その時に瑠香ちゃんの事を根掘り葉掘り聞いたんだよ』


と、これまた悪気も無くケラケラ笑って言った。

その言葉を聞いて、美咲の事を後でボコボコにしようと心に決めた。

拳を握った私を見て。


『美咲も心配してんだよ。瑠香ちゃん、幸せになる事に怯えてるから』


そう言った純さんに、何も言い返せなくなる。

相変わらず、純さんはフワフワと雲のように軽く見えるのに、時には核心をついた事を言ってくる。

ニコニコしていると思ったら、進撃なまでの瞳で私を見つめてくる。

どっちが本当の『純さん』なのか分からないけど、私が思っている以上に頭の回転が速い人だとは分かった。


純さんとの再会は、もしかしたら私の転機だったのかもしれない。

純さんと話した事で、自分の中で何かが吹っ切れたような気がした。


今までの私は、自分が傷つくのが怖くて、自分の気持ちに蓋をしていた。

だけど、昨日言葉にして、やっと分かった。

こんなにも、櫻井さんの事が好きだという事。


気が付いたら、もう戻れない所まできていた。

忘れるとか、そんなレベルじゃない。


幸せにしてあげたい。

心を満たしてあげたい。

私がそうできたらいいのに。

そう、心から思った。