「アイツを救ってやってよ、瑠香ちゃん」

「救う?」

「あの日から、ずっと暗闇の中にいるからさ」


どこか寂しそうに笑った純さんの言葉に答える事なく、瞳を下げる。

その言葉から、櫻井さんの心の闇が見える。


純さんの言うように、私は彼を救う事なんて大それた事が本当に出来るのだろうか。

自分の心も、まだ不安定なままなのに。


それでも、私は彼に救われた。

もう一度、恋をしようと思えた。


恋愛は人を変える。

だけど、悪い事ばかりではないと私は知っている。

その力が人生を色鮮やかなものにする事も知っている。

どれだけ、心を満たされるかも知っている。


「櫻井さん……」


小さく彼の名前を呟く。

脳裏に浮かぶ、彼の姿を思い浮かべながら。



ねぇ――。

櫻井さんも寂しいの?

抱きしめてほしいの?

そう心が叫んでいるの?