「――…んっ」


ズキッと手が痛んで不意に目が覚めた。

重い瞼を開けると、見慣れた天井がぼんやりと見えた。

だけど、包まれている布団は違う。

匂いも、違う。


ノソノソと体を起こして、目の前に広がる景色を見つめる。

綺麗に整頓されている部屋。

壁にかかっているのは、見慣れたスーツだった。


昨日。

あの後、お風呂に入れてもらって、リビングで寝ようとしていたら。


『ベットで寝ろ』


という櫻井さんの猛烈な押しに負けて、ベットを占領してしまった。

申し訳なかったけど、きっと私が何を言っても意見は変えないだろうと思って、大人しく寝させてもらった。


妙に重たい体を動かして寝室を出ると、リビングのソファーに横たわる櫻井さんが目に入った。

まだ、寝てる。

当たり前か。

まだ朝の6時だ。


イメージだけど、寝起きは悪そう。

爽やかな顔してるけど、朝は少しだけテンションが低いから。

きっと無理してコーヒー飲んで、目を覚ましてるクチだろ。

私も以前はそうだったから、気持ちはよく分かる。