しばらく、しんとする部屋。

櫻井さんの顔が見れない。


驚いている?

当たり前だよね。

部下から部屋に泊まっていいか、だなんて。


というか、迷惑でしかないよね。

自分で言っておいて、後悔する。

何言っちゃってるんだか。

そう思い、心の中で自嘲気に笑って、適当に誤魔化して帰ろうとした時――。


「別にいいけど」

「――え?」


思ってもみなかった言葉に、勢いよく顔を上げる。

すると、不敵に笑ってこちらを見つめる櫻井さんと目が合った。


「別にいいけど。泊まって行っても」


そう言って、私の頭をポンっと一度優しく叩いて立ち上がった櫻井さん。

そして、そのままスタスタとリビングを抜けて行く。

だけど、顔だけ僅かに振り返って。


「とりあえず風呂入れ、着替えは持ってこい」


そう言った。






―――驚いた。