突然の出来事に、心臓が飛び出るぐらい驚いた。

物凄い勢いで横を見ると、同じくベランダに出て煙草を吸っている櫻井さんと目が合った。

その姿を見た瞬間、一気に頭がパニックを起こす。


な、な、な、なんで、櫻井さんが隣の部屋にいるのっ!?

え、なんでっ!?


だけど、ひとしきり驚いた後、我に返った。

そうだ。

この人、隣に住んでるんだった……。


「お……おつかれさまです」


驚いて固まっていた体を慌てて動かして頭を下げる。

バツが悪そうに顔を上げると、ベランダの手すりに肘をついた櫻井さんが悪戯っ子のように笑っていた。

ベランダの間に仕切りがあるとはいえ、2人とも手すりの所にいれば顔は見える。

うっかり隣人のこの人の事を忘れていた自分の事を呪いながら、隠れて溜息を零す。

なんとも気まずい状況だと視線を泳がせていると、お疲れ。と不敵な笑みを零しながら櫻井さんはそう言った。

着ているものは、いつものスーツではなく、お風呂上りなのかラフな格好だった。

その姿を見て、少しだけ気が緩む。


「今日は早いんですね。仕事」

「思ったより早く片付いたからな。俺もたまには休息」


そう言って、チラッと私を見る櫻井さん。

夜風に吹かれて、サラサラの櫻井さんの髪が揺れている。