「紀野さーん。紀野愛さーん。」 先程の先生が直々に名前をよんでいた。 「あ、はい。」 「診察室にどうぞ。」 中に入ると、先生は静かに切り出した。 「…今日は、ご家族の方はいらっしゃってませんか?」 「…いえ。」 すると、先生は深くため息をついた。 「病名を…お聞きになりますか?」 な、にそれ。 あたしが…病気……なの? 「ご家族の方にだけお話ししてもよろしいのですが。」 「…教えて…ください。」