バフッとそのとき、 背中に紗百がしがみついてきた。 後ろから腕をのばして、俺のジャージの胸の辺りをギュッとつかむ。 「えっ、みんな見てるけどいいの?」 「か、加島くんのリクエストだから!」 背中から声だけする。 「プ、なんで後ろから?」 「だって……恥ずかしいよ」 首の後ろに微かな吐息を感じた。 まったくもう、俺の彼女は……、 いつも思いがけなく いとも簡単に 俺の心をさらっていくんだ。 強く握った小さな手を その大切な固まりを 俺は自分の手のひらでギュッとおおった。 END