「あ、えっ?」


「思うんだけど、緊張して指先が冷たくなるんだったら、逆に、手を温めたら緊張がとけるってことじゃない?」


なんて真顔で言ってくる。




「あー、まぁ、そう……かな」


実はドギマギしながら適当に答えた。




あいまいな返事を真に受けて、彼女は俺の手に唇を近づけて、はぁ……と息まで吹きかけ、ごしごしとやる。




「どう?」


見あげる真剣な瞳。


「あ、うん。ドキドキしてきた」


ボソッとそうつぶやいたら


「えーっ、ダメじゃん」と、はじけるように笑った。




ヤバい。可愛すぎる。


いつもいつも予想を超えてやってくる


100%の笑顔――。


やっぱこの子にはかなわない。





遠くから、俺たちクラス対抗リレーの出走者を入場門に招集する放送が聞こえてきた。