…なのに。 「あれ?部屋間違えた?」 なんて、呑気な低い声が聞こえた。 「お取り込み中ごめん。部屋間違えたみたい」 それが、その人の二言目。 黒髪の男はそのまま部屋から出ようとした。 裕介くんもア然とした顔で、ぽかーんとその人を見ている。 …そうだよね。 おかしいよね? 普通、ココは助けるものよね? 「ちょっと!そこの長身男!普通、あたしを助けるでしょ!?」 あたしは思わず、出会ったばかりの人にそんな叫び声を上げてしまった。 この状況で助けを求めるなんて、なんとも情けない。