もし、あの年からが始まりなら、
8歳の頃から書き記さなければならない。




暖かな日差しが顔を照らす。
少し眩しさを感じながら
目を細めて空を見上げれば、
2本の飛行機雲が浅葱色の空を平行して
描かれていた。

心地よい風が頬を撫で、
桜の花びらをより舞い踊らせる。




「ケーキ、帰ったら食べよっか」

ふいに後ろから声をかけられ、
自分の世界に入り
少し1人で早く歩きすぎたことに気づき
声の主へと顔を向ける。
淡いピンク色のワンピースに似合う
愛らしい笑顔で僕を見ていた。


「うん!早く食べたいなぁ、ケーキ。ねぇねぇ、見て!飛行機雲だよ、お母さん!」

「ほんとだ!あ、でも、あの雲も見て?綿あめみたいで、美味しそうだね」

そう言って実際の歳よりも
若く見られるであろう笑顔で
飛行機雲の反対の雲を指差す。
指をさした方を2人で見上げる。


「ほんとだね!へへっ、早くお家に帰って、お父さんにも言いたいな」


今日は特別な日だった。4月4日土曜日、
今日僕は8歳の誕生日を迎えた。