皇帝のサイコロ

「別にそんな細かいこと良いだろ。たった一万円」

「たった!?」

空気が変わった。

眉間にくっきりと縦の線が浮かび上がった。

瞳が少し濡れているように見える。

「言いたくないけど……。言うわ。慎、おかしいわよ。パチンコ三昧で金銭感覚おかしくなったんじゃないの?たった数分で何万と無くしてきたんでしょう?もう一万円の価値すらわからないんでしょうね。かわいそうな諭吉さん」

拳を握りしめた。

悔しさと、苛立ちを込めて。

壁に穴を開けたり椅子を蹴り飛ばすのは高校生までだ。

衝動をグッと堪える。

「今だけ一人にして。早く部屋に行って」