皇帝のサイコロ

有紗の恋人はそういうギャップに惚れたのかもしれない。

「あ、私が貼ろうか?お母さんの服捲るのって何か恥ずかしくない?」

母の寝巻きに触れた瞬間、有紗がそう申し出た。

確かに言われてみれば。

腰は尻のすぐ上に位置する。

パンツがチラリと見えてもおかしくない。

俺が恋人でもないただの親のパンツにドキドキするとは思えないが、ここは同性の有紗にやってもらおう。

「じゃあお願いします」

有紗にバトンタッチして母の腰を見ないように体をくるりと背けた。

そして思い出した。

俺もパンがまだ食べかけだったことを。

台所のテーブルにポツンと置かれている数分前まで熱々だったチーズ食パンをかじる。

所々ぬるく、冷たくなってしまっていた。