一体何だと言うのか。
少し苛立ったけれど、私は精一杯柔らかく訴える。


「あの、通して欲しいんですけど。」

「名前なんてゆうの?」


なに、この人。
教室実習生と言えど、どうせチャラい大学生だ。女子高生をからかって喜んでるんだ。

苛々したけれど、面倒だったので素直に答えた。ゆったりとした笑顔を携えて。


「吉岡千晶です。では、失礼します。」


そして実習生の横を擦り抜け、廊下を早足で歩いた。
背中に視線を感じたけれど、気付かないフリをした。