アドラーキャット





二人でやるということで普通よりもかなり多い量を書かされた俺とみずき。
それはまぁいい。

徹夜でテンションがおかしくなったみずきと俺で振りまくったコーラをジャンケンで負けた方に開けさせて遊んだりもした。
馬鹿だったと今では思う。

まぁ大学生に黒歴史はつきものだろうし。


そうして一週間の努力を経て俺とみずきの原稿は完成した。

修正、誤字脱字のチェックをギリギリで終えた俺は精魂ともに尽き果てていた。
つまり、徹夜だ。
オール。

眠くてしょうがなくて、保存したUSBメモリーをポケットにつっこみフラフラのまま大学へ向かう。
このときの記憶がないのでそのくらい疲れていたのだろう。




だからか、「荻野目くんっ‼」と駆け寄ってきた同じサークルの女の子に気づかなかった。

ちなみに声をかけられたのは歩道橋。
突然後ろから声をかけられ驚いた俺はあろうことかその場に尻餅をついてしまった。

眠気のピークで、気づきもしなかった。




ポケットに入れたUSBメモリーを、落としていたことに。




USBを落としたことに気付いてからはもう修羅場。
必死でパソコンに残っているデータをかき集めうろ覚えだが手を加える。

それでも丸一日かかった。

みずきに頼りたかったが彼女はすでに自分の原稿は終えて料理作りに専念している。
というか、この失態は俺のせいだから俺が一人で責任をとるべきだと変に意気込んでいたのだ。

そんなギリギリの状況だからか、忘れていた。