アドラーキャット






ありえない。


一週間前、俺は散らかりまくった部屋でそう呟いていた。

荻野目駿、19歳。

現在最悪の状況にいる俺は何が原因だったのか突き止めるため、一週間前のあの悪夢を思い出してみようと思う。






始まりは、やっぱりみずきだった。




「和歌サークルで本を作りたい!!」




それぞれが好き勝手に和歌を研究するというなんとも曖昧な活動内容だから新入生が入ってこないのだと考えたのか、みずきは突然そう提案した。

この19年間大抵のことは何でもやれたし、サークルの本に載せる文章を書くくらいだったら簡単だろうと思ってその時はあっさりと「別にいいよ」と答えてしまった。
きっとそれが間違いの始まり。

「じゃあ、やるからには徹底的にやりましょうか。」

ニヤついた祐介の顔は今でもはっきりと覚えている。
俺は祐介を許さない、絶対に。

何を思ったのか祐介の口車にのせられてみずきも他のサークルのメンバーもどんどん本の話に前向きになっている。


「荻野目くん、私定家の和歌紹介する文書きたいんだけど荻野目くんは何書きたい?」


そう聞いてくるみずきは聞いてきてるはずなのに「一緒にやろうよー」と顔にありありと書いてあった。

俺は秋の和歌を紹介する文でも書こうと思っていたのだが、キラキラとした目でこちらを見てくるみずきに勝てるはずがなかった。


「別に、定家でもいい。」

「本当に!?やった。」

そう言って笑ったみずきの顔が見れただけでもまぁ良しとしよう。


だが、事件はその後起きた。