「今日バレンタインじゃないですか。一応頑張ってチョコ作ったんですけど、その現場見たらテンパって川に投げ捨てちゃいました。」
「なかなかなことするねぇ。」
「とりあえず彼のことを抹殺したかったです。」
「君けっこう猟奇的だね。」
ハハハとお兄さんは軽快に笑う。
笑われたというのに、その笑い方は全然馬鹿にした感じなんかじゃなくて、若者の不器用さを懐かしく感じているような笑い方だった。
「お待たせしました。」
店員がやって来てお兄さんの前にブルーベリーパイを置いた。
鮮やかなベリーの色が揺らぐ視界の中で輝いて見えた。
男の人がケーキを自分から注文して食べてるのって、変な感じだ。
荻野目くんも私のために買ってきてくれたりはしたけど、自分のためには絶対買わないと言っていたのを覚えている。


