アドラーキャット





サァァァという水の流れが聞こえ、釣られて横を向くと川が流れていた。
水は黒く中に生き物が住んでいるかも判断出来ない。


ぼたぼたと、意図せず頬が濡れる。
なんでこんなとこで泣くんだ私は。

くっそぉ、と思い肩にかけていた鞄から荻野目くんへ作ったチョコレートを取り出す。

そして、思いっきり。

ぶんっと、投げる。

ぽちゃんと間抜けな音でチョコレートは川へ落ちていった。


気分は最悪だ。

ムカムカするものを胸に抱えたまま歩く。

今日は家にいたくない。
お酒でも呑んで、何も考えられないくらいに頭を飽和させたい。

バレンタインなんて、糞食らえ。

心の中でそう呟き、私は何か喧騒を求めるように駅の方へ早足で向かった。