ありえない。
気が付いたら私はその言葉を呟いていた。
いやだって、確かに料理上達作戦で忙しくて全く会えないときもあったけど、でも。
ふるふると震える手を握り締め、私は踵を返した。
二歩歩いて振り返り、呆然とした顔をしている荻野目くんと、無表情の佳乃子ちゃんの方を向く。
「わけわかんない。」
何か言おうとしたのか荻野目くんが口を少し開いたのが見えた。
でも聞いてなんかやらない。
振り返ってなんかあげない。
確かに佳乃子ちゃんは美人だし、料理出来るし、私なんかよりもずっとずっといい子だろうけど。
早足で歩く。
心臓がドキドキして、わけもわからず汗も出てきた。


