アドラーキャット



なんとなく、荻野目くんが来たときにでも出そうと思ってキャラメルも手に取る。


「ありさちゃん、ピザまんでいい?」

「うん。」

突然コンビニの入口の方から聞こえたカップルの会話にビクッとなった。

聞いたことがある声だ。
こっそりと、お菓子の棚から声のした方を覗き込む。
やっぱり、思った通り。

「傑先輩は肉まんですかー?」

「うん。」

傑先輩だった。
隣にいる可愛い子は見たことない顔だから多分一年生だろう。

こんなところで傑先輩を見るなんて、ビックリだ。

でも、それ以上にビックリなのは、こんな場面に遭遇しても、全く私の心が穏やかなことだ。
本当に、私はもう先輩のことなんとも思ってないんだな。