激しい自己嫌悪の最中、何と言えばいいのか分からずじっと荻野目くんを見つめる。
「みずき、あのさ、佳乃子さんとは、なんでもないから。」
「……うん。」
「寝不足でぼーっとしてて、や、言い訳はしないけど、ごめん。みずき悲しませた。」
「……うん。」
不安そうな目で、それでもじっと私を見つめてくる荻野目くん。
あぁ、本当に、なんでこんな実直な人が私に構ってくれるんだろう。
下降する思考は留まることを知らない。
「うん、大丈夫。荻野目くんに落ち度がないことは分かってるよ。」
「え、うん?」
そう、荻野目くんは何も悪くない。
私が釣り合わなかっただけだ。
私は全て捨てて一からやり直さなければ。
荻野目くんに釣り合うようになったら、ちゃんとまた告白しよう。
ふと目線を移動すると、荻野目くんの後ろの木に祐介くんがいるのが見えた。
大方荻野目君が心配で見に来たのだろう。
お前は荻野目くんの保護者か。
「えっと、みずき。」
「うん。」
「俺のこと、もう怒ってない?」
「怒ってないよ。私こそ勝手に騒いで喚いて無視してごめんね。」
「いや、全然大丈夫。」
荻野目くんの口元が緩んでいる。
安心した、とその表情が物語っている。
私も荻野目くんが笑ってくれて安心したよ。
そんな気持ちをこめてニコリと微笑めば荻野目くんが顔を赤くして固まる。
数秒後、何かを期待するような目でこちらを見ながら荻野目くんが口を開く。
「じゃあ、これからまた、」
「そうだね。」
「みずき」
「うん。よし、別れようか。」
「…………うん?」
ニコニコと笑う私。
ポカンとする荻野目くん。
腹を抱えて大爆笑する祐介くん。
ある日の穏やかな昼下がり。
木漏れ日が気持ちいい大学の一角。
そこにはなんともカオスな風景が広がっていた。


