アドラーキャット





「そうなんだぁ……あの二人……」

「何その反応。」

「んー、なんか、私の勝手なイメージだったけど、荻野目くんってさ、こう、イケメンじゃん。チャラチャラしてない、物静かで知的なイケメンって感じ。」

「あー、確かに。なんか独特の雰囲気あるよね。芸術家っぽいっていうか。」

「突然一人旅とか言って外国とか行っちゃいそうじゃない?」

「行きそう!」


二人の会話を聞きながら私は一人何とも言えない気持ちになる。

荻野目くんが、知的で、物静か、とは。
まぁ、確かに荻野目くんは頭がよろしい。
チャラチャラはしてない、うん、大抵静かだ。
独特の雰囲気、あの、猫っぽい感じのことか?

私が悶々と考えている間にも二人は会話を続ける。


「不思議な感じのイケメンで、突然外国の美女と結婚しますー、フランスに永住しますー、みたいな人生を送りそうだなって、勝手にイメージしてた。」

「アハハ何それー!」

「えっ!?そんな感じしない!?」

「まぁ確かに知的な美人さんをいつの間にか捕まえてそうだなーとは思ったことあるけど。」

「うん、うん。だからなんか、みずき先輩っていうのが意外で。」


おいどういうことだ。
美人でも知的でもないみずき先輩って言いたいのかこいつら。

こうケンカ腰に思ったとき。

はたと気づいた。


こうして鼻息荒く憤慨するところがダメなのか、私。

普通ここは、自分が荻野目くんに釣り合わないと思われてることにショックを受けて泣き出すべきで。
それが一般的な可愛い女の子で。

鼻息で相手を蹴散らすようなブルドーザーみたいな私は全く可愛くなくて。


……鼻息で相手を蹴散らすみたいなブルドーザーって何だ、どういう例えだ。


自分で考えたことにムカムカしながら私はその場を後にした。