プラチナブルーの夏

何度も肩で息をする。気がつけばあたしは、

全身汗だくだった。
 
壊した食器や卵のおかげで、ドロドロまみれの血だらけになった。
 
でも、そんな事はもう、どうだっていい。
 
最後に大きく深呼吸をして、腹の底から目一杯叫んだ。

「キモいんだよ!!ウゼぇんだよ!!!死んじまえクソババァ!!!」
 
あたしはそのまま再び家を出て、チャリに跨った。
  

ーーどこまで行けば逃げられるんだろう?
 

もう何もかも捨てて、どこまでも逃げてしまいたい。
 
見上げると空はいつの間にか、モクモクと暗い雲に支配されていた。
 
行くあても特に決めないままで、あたしはチャリを発進させた。
 

ゴゴゴゴ………


ふいに空から不穏な音が轟く。
 
雷鳴。
 
夕立…?
 
続いてフラッシュのような一瞬の光。ギザギザに空は破られた。
 
しばらく経ったら、大粒の雨が一粒ボチっとあたしの後頭部に当たり、

そのまま首まで流れ落ちて来た。
 
たった一粒こぼれただけで、すべての雨は貫くように

次々と地面にこぼれ落ちてくる運命なんだ。
 
たった一粒も残さずに。
 
…たった一粒も許さずに。