仕方ない。

あの手を使うしかないな。


「高校に入学した時のお楽しみにしとこうよ!…ね?」


俺は笑顔で少しかわいい感じの声で言った。


あの手…


そう。普段は出さない『かわいい』を出す。

…つまり、猫をかぶるということだ。


たいていこれを使えば、面倒くさいこともクリアできる。


「七海くんがそう言うなら…!」


女子はみんな納得し、はけていった。


あー疲れた。


猫かぶると精神的にかなりくるんだよな…。


「七海、おつかれさん。」


「…良平っ。あっ、そうだ。良平!郁も!女子に聞かれても絶対教えんなよ!」


2人が話してしまうと内緒にした意味がない。


良平は「もちろん。」と言った。


良平はこういう時の物分かりがいいから、信用できるし安心。


問題は…郁だ…。