真理子が勝手に応募して、なぜか知らないうちに賞までとってしまった絵が広まるのはそう早かった。


色んな人から「おめでとう」って言われる。

なにがなんだか分からないまま過ぎていって――…



「…莉音、おめでとう」


昴先輩の声で久しぶりに涙が伝った。


「昴先輩…」

「元気か?」

「うん、元気だよ」

「もしかしてまた泣いてんのかよ」

「泣いてないよ。真理子が勝手に出した絵が勝手に賞とっちゃって、それで泣いてる」

「ほら、泣いてんじゃねーかよ」


ちょっと恥ずかしかった。

あの絵を昴先輩が見たって思うと、恥ずかしかった。


「…先輩?」

「うん?」

「会いたいよ。…会いに行ってもいーですか?」

「おいで、莉音。俺も会いたい」


そんな事を言うからまた涙が走った――…


「昴先輩が、好き。好きすぎて胸が痛いよ…」

「じゃあ来いよ。こっち来たら抱きしめてやるから来いよ。美咲に頼め」

「うん、行こうかな…」


我慢してた。

ずっと。

行っちゃうとダメだと思った。

でも声を聞くと会いたくなる。


「待ってる」


そう言った昴先輩の声の所為で、涙が止まんなかった。



電話を切って、学校の屋上の空に向かってパシャリと写真を撮る。

もう秋晴れ。

空気が澄んで空が抜けるように青い空。


その写真を昴先輩に送った――…


そっちの空は何色ですか?


昴先輩から送られてきた写真は、真っ暗な暗闇に散らばった輝かしい星の写真だった。



そか。夜か、

ねぇ昴先輩?

その夜空を一緒にみたいです。


フッと笑みを漏らしたあたしはベンチに寝転がって目を閉じた――…




《完》