「ねぇ、聞いてる?」
何故か急に口を開かなくなった先輩に声を掛ける。
「あぁ、聞いてる」
急に静まり返った先輩の声に、少しだけ眉を寄せてしまった。
「だからさ、昴先輩に会いに行って教えてもらうから」
「俺が忙しかったらどーすんの?」
「うーん…」
「だから、その為に全て頭の中に叩き込めよ」
「えー…なんで?もう覚えられない」
「わがまま言うなよ。お前が頭悪いから仕方ねーだろ」
「……」
思わず頬を膨らませてしまった。
昴先輩はため息とともにタバコの煙を吐き出す。
叩き込めって、言われてもそんなすぐに覚えられるわけないじゃん。
「これ絶対に覚えとけ」
タバコを咥えたまま昴先輩はペンを持ち、また書き始める。
その隣で相槌を打って聞いてるあたしは正直言って、半分頭には入っていなかった。
自分のペンを走らせるスピードが次第に落ちて来る。
もうここに来て正直どんだけ時間が経ってんのかも分かんなかった。
昴先輩のスパルタについていけなくなる。
「…もう帰ってする」
思わず呟いた言葉に、昴先輩は手を止める。
「お前、帰ってもやらねーだろ」
「だって昴先輩、スパルタだもん」
「スパルタ?」
「教師みたい」
「……」
「疲れた」
昴先輩の途轍もなく大きなため息が降りかかる。
ため息吐き出したいのは、あたしも同じなのに。



