この前、1日ホテルで過ごしてしまった時の事を考えた所為か、変にドキドキする。
別に先輩の事を好きじゃないのに何故こんなにドキドキしてんのかも分かんなかった。
「あ、先輩もケーキ食べます?」
誤魔化すようについそう言ってしまった。
「いらねーよ」
「嫌いなんですか?」
「甘いもの好きじゃねーし」
「へー…そうなんだ。聖くんも先輩のパパも好きじゃないって言ってたし、美咲さんが可哀そうですね」
「は?」
「だって一緒に食べてくれる人が居ないから」
「つか何でアイツと一緒に食わなきゃなんねーんだよ。好きだとしても食わねーよ」
「そうですか…」
昴先輩は呆れた様にため息を吐き、ソファーで寝ころぶ。
そんな先輩から視線を外し二つ目のケーキを食べてしまった。
あと2個は家に帰ってから。
「お前、そんな食ったら太るぞ。胸につきゃいーけどよ」
「ひどっ、」
思わず声を漏らすあたしに昴先輩は面白おかしく笑いだす。
「つーかサクヤがお前の胸触ったっつーから」
「違うっ、それはお姉ちゃんが」
「てか、なんなの、お前のねーちゃん…」
呆れた様に先輩は顔だけをこっちに向ける。
「そんなのあたしに言われても困るんだけど。そんなお姉ちゃんの事、好きなくせして」
つい口を滑らせてしまったあたしは慌てて口を紡ぐ。
だけど、聞こえてたらしく。
「はぁ!?俺がいつ香恋さんの事、好きっつった?」
「聞いてないけど、雰囲気?」
「は?んだ、それ」
首を捻りながら先輩はもう一度、身体をソファーに沈めた。
あれ?って事は好きじゃないんだ…
あんなに仲いいのに。



