恋の訪れ


「何もない」

「何もないって事はないでしょー」

「もしかしてそれ聞く為にあたしを呼び出したの?」

「それもそうだけど、ケーキも約束してたでしょ?」

「そうだけどぉ…」


香澄さんが店員を呼び、ケーキセットを注文した後、


「ちょっと、どんな展開になっちゃってるわけー?」


楽しそうに頬を緩めた。


「あたしも気になる!!あの超イケメンな昴先輩と一つ屋根の下で恋に落ちるなんて」

「別に恋に落ちてないから」

「でも一緒に居たんでしょ?」

「居た…けど」

「キャー!!やっぱ居たんだ」

「あ、あのね真理子。そんな大した事ないの」

「じゃ、なに?」


って聞かれても何をどう言ったらいいのかなんて分かんなかった。

昨日の経緯を語れるほど、あたしも何がどうなったのかなんて分からない。


サクヤ先輩とホテルに行って寝てしまって朝でした…なんて流石に言えなくて。

でも何かを話さないと、真理子たちの興奮がおさまりそうにもない。


「あ、あのね。実は…昔の男の子ってね、昴先輩だったんだ」


とりあえず昨日の事はスルーした。

なのに興奮がおさまるどころか、更に真理子たちの興奮を高めてしまったのは間違いなく、このあたしだった。