恋の訪れ


「痛いよ」

「お前が余計な事、言うからだろ」

「別に言ったつもりないもん」


そう呟いた瞬間だった。

ガチャリと聞こえた玄関の音に、何故か妙に焦った。

お姉ちゃんじゃ無い事が確かなため、玄関を見つめて昴先輩の肩を揺すった。


「ちょ、先輩。ママかパパだよ、どうしよう」

「どうしようって、何が?」

「だって帰ってきたもん」

「はぁ?だったら何?別にいいだろ」

「いい事ない――…」


「ただいまー」


なんて聞こえてガチャっとドアが開いた瞬間、何故か昴先輩から離れる。


「おかえり」

「あ、誰の靴かと思ったら昴くんだったんだ」

「お邪魔してます」


タバコを消した先輩は軽くママに首を傾げると、ママはニコっと微笑んだ。


「あ、あのね。先輩もう帰るって」

「そんな事言ってねーだろ」


横から小さく呟いた先輩はあたしの頭を軽く突く。


「え、そうなの?もっとゆっくりしていけばいいのに」

「いや、もう十分ってほど、ゆっくりしてるから」


なんて言った先輩に向けてる背中を昴先輩に叩かれる。

痛みが走った所為で、先輩を睨むと同じく眉間に皺を寄せてた。