恋の訪れ


「違うわよ。バイト」

「あー、そっちね」

「じゃあ、あたし行くから昴またね」

「あぁ」

「莉音の事よろしくね」

「はいよ」


呑気に手をヒラヒラ振ってる先輩にため息を吐く。

別によろしくされなくって、いいし。なんて思いながら、ため息とともに深くソファーに背をつけた。


「昴先輩ってさ、お姉ちゃんのバイト知ってんの?」

「キャバだろ?」

「そうだね。お姉ちゃんって美人だよね…」

「そうだな」


やっぱ、それは認めるんだ。


「先輩って、あぁ言うタイプ好きだもんね」

「は?」

「だって先輩の周りってさ、皆あんなタイプじゃん」


要するに派手って事。

それ以外、見た事ないんだけど。


「別に好きで一緒に居てねーんだけど」

「好きじゃないのに寝るんだ…」


つい言ってしまった言葉に慌てて口を紡ぐのも遅く、昴先輩の微かなため息が煙と一緒に吐き出される。

だって初めて先輩を見た日、″一回寝たくらいで何で付き合わなきゃいけねーの?″って、確かにそう言ってた。

そう言って泣かせてた。

別にあたしには関係ないけど。そう思った瞬間、


「てか嫉妬でもしてんの?」


馬鹿っぽく笑った昴先輩の声に顔を顰めた。

やっぱ、ムカつく。