恋の訪れ


「あるわけないじゃん」

「だろーな」

「だ、だろーなって何よ!?それよかお姉ちゃん?」


そう言って、あたしは先輩の隣に座っているお姉ちゃんの傍まで行き、服のファスナーを手にした。


「ちょっともう少し上げてよ。胸見えまくり」

「あのね、莉音には分からないと思うけどこれ以上閉まんないの」


言われた通り胸が邪魔でファスナーすら閉まらない所為で、あたしの手がすんなりと離れる。

つか、そんな細身のセットアップ着ないでよ!


それどころか、「わっ、莉音ちっさ!」なんてあたしの胸をお姉ちゃんは掴んだ。


「ちょっと、やめてよ!」

「昴に揉んでもらいなよ」

「はぁ!?何言ってんの、お姉ちゃん…」

「揉んでもらえば大きくなるでしょ」

「変な事、言わないでよ」

「一週間、俺が揉んでやろーか?」


クスクス笑って言ってくる昴先輩がムカつく。と言うよりも、お姉ちゃんがムカつく。


「二人とも最悪。風呂入って来る」


頬を膨らませたまま脱衣所に向かう。

苛立ったまま風呂場に入り、シャワーを頭上から浴び、目の前の鏡に自分の胸が映った瞬間、本当に無い事に思わずショックを受けた。

お姉ちゃんと何故こんなに違うんだ。

と思いながら今頃二人で何話してんだろうとも思った。