恋の訪れ


「教えてやるって何を?」


その昴先輩の笑みがあまりにも怖くて、少し頬が引きつる。

何を言われるんだろうと思った時、昴先輩は面白そうに口を開いた。


「莉音がな。昴くん好きだって抱きついてきたのも、キスしようって何度も迫ってきたのも、風呂も入りたいって言った事も、一緒に寝たいって言ってきたのも、結婚したい―――…」

「あー!!もういい、いいからもう言わないで」


張り上げた声に昴先輩はクスクス意地悪に笑う。


「思い出せねーの?」


なんて面白そうに言う先輩に顔を顰めた。


「思い出せないって言うか、思い出したくないし、そんなの。むしろ昴先輩が作って言ってるでしょ?」

「は?俺がこんな事、作って話すかよ」

「じゃ、じゃあ守って下さい。今後一切、そー言う話はしないって、約束してください」

「なんで?」

「嫌だからです」

「お前が言った事なのに?」

「言った記憶もないからこそ、言われたくないんです」

「え、何?お前今更恥ずかしがってんの?」


ソッポ向くあたしに、昴先輩は笑いながら顔を覗き込んでくる。

だから余計に恥ずかしさが込み上げる。

たかが、あんな小さな時に言った言葉ですら恥ずかしい。


あたし何言ってんだろう…