恋の訪れ


「お前、シャワーは?」

「もういい。帰ってから入る」

「じゃあ、もう出るぞ」

「うん」


昴先輩の後に着いて行くと、先輩は会計機の前でため息をつく。


「あのやろー、俺に金払わせやがって」

「えっ?」

「あいつ、サクヤ。つかお前がこんな所に来っからだろ」

「ごめんなさい。お金帰ったら払うから」

「金はいらねーけど。ま、まぁ…あれだあれ。簡単にノコノコ来んなって事」

「はい」


すんなりと謝って、小さくため息を吐き捨てる。

ホテルを出た瞬間、その明るさに眩しさを感じる。

少しひんやりとした空気が肌を掠めた。


「どうしよう…ママに怒られちゃう」


ふと視線を制服に向けて小さく呟く。

案の定、物凄くクシャクシャになってて、手でその部分を伸ばしても綺麗になんてならない。


「だから言ったろ、脱げって」

「やだよ、そんな事できないよ」


いくらなんでも裸で寝れる訳ないじゃん。

昴先輩は慣れてるかも知んないけど、あたしは慣れてない。

いや、むしろそんな経験、全くない。


「つか今更?一緒に何度も風呂入ったってのに」

「お、お風呂!?」

「ま、お前の記憶をなくしてしまった俺が悪いけど」


″だから教えてやる″

付け加えてそう言った先輩は不敵に笑みを見せた。