恋の訪れ


昨日の事は出来るだけ思い出したくもないし、これ以上、触れたくもない。

冷たい水で顔を冷やすと、気分までもさっぱりした。

あれだけ泣いた所為か、少し赤く腫れてる目に思わずため息が漏れる。


何度も水で冷やすも、なかなか腫れは引いてくれなくて、泣きましたって感じが物凄く伝わる。

瞼を抑えながら、さっきまで居た部屋に戻ると、


「どした?」


昴先輩の不思議そうな声が聞こえた。


「目、腫れてる」

「あれだけ泣きゃ腫れんだろ」

「どうしよう…学校行けない」

「お前、今日も行く気?土曜だけど。しかも今11時だし」

「えっ?」


ビックリした所為で思わず俯いてた顔を上げ目を見開く。

そんなあたしに、「やっぱ馬鹿だな」なんて本当に馬鹿っぽく笑った昴先輩に眉を寄せた。


「ほら、また言う。もうほんとに昴先輩嫌いなんだから」

「I don't hate rion」 …俺は莉音の事は嫌いではない。

「えっ、なんて?さっき先輩なんて言いました?あたしがなんて?」

「さっき答えた」

「ってか英語で言うのやめてくれません?あたしが英語苦手なの知ってるじゃないですか!」

「勉強しろ、勉強」

「もぅ!」


顔を顰めるあたしに昴先輩はまた笑って髪を乾かしに行く。

暫くして戻ってきた先輩は制服に着替えて鞄を手にした。