恋の訪れ


―――…


どれくらい眠ってたのか分からないくらいだった。

密かに聞こえる物音で目が覚めた時、


「あ、起きた?」


なんて、目の前で下着姿のまま立っている昴先輩は濡れた髪をタオルで拭っていた。


「な、何してるんですか?」

「何ってシャワー。お前も浴びれば?」


昴先輩はソファーに座ったかと思うと、タバコを咥えて火を点ける。

そっか。まだ昨日の延長だったんだ。

自棄に先輩と居る時間が長すぎて、自分のサイクルがなんだか狂う。


にしても、先輩ってタバコ吸うんだ。

あぁ、サクヤ先輩も吸ってたよな。


「うん?なに?」


思わず見つめすぎた所為で先輩はタバコを咥えたまま首を傾げる。


「あ、あぁ…昴先輩ってタバコ吸うんだと思って」

「あー…うん」

「ダメだよ。未成年なのに。学校で見つかったら怒られちゃうよ?

「見つかんねーようにしてる。莉音みたいに馬鹿じゃねーから」

「もぉ。また言う…」


小さく呟いて昴先輩を見る。

髪をタオルで拭きながらそのタバコを咥える姿に、何故だかドキドキしてしまった。

何でか分かんないけど、昴先輩にドキドキするなんて、あたし…どうにかしてる。

昔、一緒に遊んでたとは言えども、昔と今では全然違う。


時の流れで風貌すら変えてしまって、あの時の男の子が昴先輩だなんて今でも想像すらつかない。

その整ったあまりのも綺麗な顔に視線すら向けられず、


「顔…洗ってくる」


そう言って、その場を離れた。