「早くしろって」
そう昴先輩のムカつく声が飛ぶ。
ほんと偉そうで、なんでこんなに偉そうなんだろうと。
「莉音ちゃん、またね」
玄関に向かうあたしの背後から美咲さんの申し訳なさそうな声が聞こえる。
「ありがとうございました。ケーキ美味しかったです」
「ううん。葵と、諒ちゃんによろしくね」
「あ、はい」
軽くお辞儀をして外に出た。
その瞬間、昴先輩はあたしの前で仁王立ちするかのように、腕を組んで眉を寄せた。
「お前、来んなよ、家に」
「何で?」
「迷惑」
「はぁ!?何が迷惑なの?別に昴先輩に迷惑掛けてないじゃん」
「かけてるだろーが。お前送っていかなきゃなんねーんだし」
「じゃあ、別にいいよ。一人で帰るから!」
フンっとソッポを向き、足を進める。
でも、昴先輩にグッと引かれた腕に必然的に足が止まった。
「大声出すなっつーの。早く乗れって」
スッと離された腕。
昴先輩は白の車の前で足を止めた時、
「あれ?兄貴の女?」
突然現れたチャラそうな男に顔を覗き込まれて、たたらを踏んでしまった。
「あ、兄貴?」
戸惑って、つい声が裏返ったと同時に、昴先輩を見つめると、
「ちげーよ、俺の女な訳ねーだろ」
「だろーな。兄貴の女にしては落ちてんな、と思った」
なんてとんでもない事をいい放つ、この男に眉間に皺が寄る。
な、なんなのこの男。
制服を着崩して髪も薄く染め、チャラそうなこの男。兄貴と呼ぶくらいだから弟だろうけど、失礼にもほどがありすぎる。
最低だよ、この兄弟。



