恋の訪れ


どうしよう、どうしたらいい?

来たのに、そんな言葉が頭の中を駆け巡る。帰って来なくていいのに。なんて思ってしまった。


「あ、昴おかえり」


美咲さんの声と同時に現れたのは、やっぱり…あの昴先輩だった。

ちょっとだけだけど、昴って言う別の人かと思ってたけど、顔を見た瞬間、目を瞑りたくなった。


「…は?」


案の定、あたしを見た瞬間、昴先輩は目を見開く。

と次第に眉間に皺を寄せたのが分かった。


その視線から徐々に遠ざけ、リビングの遠くの方を見つめる。


「莉音ちゃんね、昴待ってたの」


美咲さんの言葉に、心の中で、待ってません!と叫んでみる。

いや、昴先輩に会いに来たんだけど、もうどうでもいいように感じる。


「つか、来いなんて頼んでねーし」


やっぱ偉そうだな。


「頼んでなくても莉音ちゃんがお話――…」

「俺はねーし。つか俺、今から出かけんだけど」

「じゃあさ、送ってってあげてよ」

「は?何で送らなきゃいけねーんだよ、こいつが勝手に来てんだろ」


…やっぱ昴先輩は嫌い。

あたしが勝手に来たけど、そんな言い方ないでしょ?


そう美咲さんも同じ事を思ったらしく、


「そんな言い方ないでしょ?外も暗いし、送ってってあげて」

「うっせーな」

「…おい、昴。いい加減にしとけよ」


さっきまで口を閉じていた翔さんの声に、一瞬に体が硬直する。

優しかった口調が一瞬にして変わり、翔さんが昴先輩を見上げた途端、小さく昴先輩が舌打ちした。