「来ちゃった…」
何で、ここに足を向けたのかも分かんなかった。
誕生日の日から数日後。
学校帰りに立ち寄った場所は、美咲さんの家の前だった。
アルバムを開いて、昔を語る様にママに美咲さんの家を聞き出した。
だけど、表札には芹沢って書かれてあるのに、写真と全く違う家。
そー言えば、昴先輩の苗字って芹沢だったよね。
でも違うきっと。ここじゃない。それはきっと同姓同名。未だに絶対、信じたくない。
絶対きっとここから違う男の子が出てくるはず…
それにしても豪邸かよ。と思うほど、目の前にそびえ建つ家は大きくて、高級車が停まっている。
赤の高級車に、白の高級車。
おまけに黒のベンツ。あとバイクと原付。
なんだよ、この家。と思いつつ、車を眺めていると、
「…あれ?莉音ちゃん?」
不意に聞こえたその声に、ビクンと身体が飛び跳ねた。
「あっ、」
振り返ると美咲さんが不思議そうに見つめて来る。
「どうしたの?」
「あ、いえ…」
何をどう言ったらいいのかも分からず戸惑うあたし。
どうしよう。
来たのに、どうしよう。
何でもないですって、帰れる状況でもなさそうで。
美咲さんに用事…な訳もないし、美咲さんの息子に会わせて下さいって言えないし。戸惑っていると、
「もしかして、昴に用事?」
なんて、美咲さんの口からその名前を聞いた途端、軽く眩暈が起きた。
やっぱ、昴先輩のお母さんは美咲さんだったんだ。
何となく分かってたけど、実際聞くと、あまりの衝撃に目の前がかすむ。
やだ、倒れそう…



