変な胸騒ぎがする。

未だに状況が掴めなくて、頭が混乱する。


それに加えて寝てない所為か、眩暈が起きる。

だけど、学校を休めば、今眠っているお姉ちゃんと出くわすことになる。

今、お姉ちゃんの顔を見るのは避けたい。


だから、仕方なく学校へ向かったんだけど。


「…ちょっ、莉音っ、」


昇降口で頭がフワーッてなる感覚とともに、ずり落ちる身体。

気分、悪い…

真理子の声にかろうじて目を開けたものの、重い瞼は落ちる。

そして、そのまま倒れ込んでしまった。


「ぎゃーっ、莉音!大丈夫?どうしたのよっ、ねぇってば!」


真理子の張り叫ぶ声は物凄く聞こえるのに身体が動かない。

必死で目を開けようとするも開かなくて、


「真理子ちゃんどーしたの?」


不意に聞こえたその聞き覚えがある声が耳に微かに入り込む。


「あ、サクヤ先輩っ。莉音が…」

「うわっ!おいおい、どした?顔色悪くね?おーい、莉音ちゃん?」


身体が揺すぶられる感覚がする。

重い瞼が開くことを禁じられているように、開かない。


「ど、どーしよう…」

「…保健室行けよ」


真理子の戸惑いの声に続き新たに聞こえた声に変な胸騒ぎを覚える。


「おー、昴。だったらお前が連れてけよ」

「は?俺?」

「だって俺、女抱える力ねーし。早く行かねーと莉音ちゃん、死ぬかも」

「死なねーだろ、」


素っ気なく返された言葉とともに、ふわっと身体が浮く。

誰かに密着した身体からフワッと香水の香りが鼻につく。


それはどう考えても昴先輩の香りだった。


ちょ、ちょっと待ってよ。

頭の中では分かっていても、言葉を出す元気すらない。