とくにこれと言った事もなく、夏は過ぎ去り秋になろうとしてた。
夏休みはこれと言って何もなく、夏美と香澄先輩と会うくらいだった。
でも、あと一つ。
「おはよ、莉音」
ヒロ君と会う機会も増え、今では一緒に登下校する事が毎日の日課になってた。
「あ、ヒロくんおはよ」
そんなあたしにヒロくんはクスクスと笑みを漏らしながら近づいて来る。
「え、なに?」
首を傾げるあたしにヒロ君は口角を上げた。
「いや、莉音ってさ悩みとかねーのかな、って思っただけ」
「…悩み?」
「だっていつも明るいから」
そんな事、ヒロくんと居るからなんて言えるわけもなく、
「そ、そう?」
曖昧に返す。
「あぁ」
「ヒロくんって、もしかして悩みとかあるの?」
「悩みねぇ…悩みっつーか――…」
「りーおーんー!おはよーん」
遠くの方から聞こえて来た声に振り返る。
後ろから真理子が大きく手を振って、小走りに走って来た。
もう絶対、真理子はあたしとヒロくんの仲を壊そうとしてるのに違いないよ…
「あいつも相変わらず元気だな。あいつこそ悩みなさそー」
そう言ったヒロくんに思わず振り返った。
「あ、それでヒロくんの悩みって何?」
「いや、別に。んじゃ、先に行くぞ」
ヒラヒラ手を振ったヒロくんは先に学校に向かってしまった。
なんだろ、ヒロくんの悩みって…



