「この馬鹿、莉音!!」
そう大きく部屋に響いたのは次の日の夕方暮れ。
久々に真理子の家で香澄先輩と三人揃った。
なのに、真理子の大きな声で思わず耳を塞いでしまった。
「莉音!アンタねぇ、弘晃の事よく分かんないとか言ってなかった!?」
「遠い過去に言った様な…」
「過去じゃないでしょ!現在でしょ!!」
「……」
真理子はバンっとテーブルを叩きつけたと思うとため息を吐き出す。
その隣で相変わらず興味なさげに聞いてる香澄先輩はいつものように雑誌に目を通してた。
「信じらんない!ショック受けるような事言われて落ち込んでたと思えば、なんの変わりようだか…」
「だってヒロくん、優しいし」
「優しいって言うかあれが普通なの。みんな平等だからね!」
「彼女と別れて寂しがってるかな、って思うし」
「はぁ!?そんな訳ないでしょ、弘晃から振ってんだから。はぁ、弘晃も何考えてんだかねぇ…一回ガツンと言わなきゃ分かんないのかね」
「えっ!?辞めてよ、ヒロくん可哀相だよ」
「だからアンタは馬鹿って言ってんの」
「酷いよ、真理子…ねぇ、香澄先輩?」
大人びたクールの香澄先輩は一瞬だけあたしに視線を向け、
「昴はどうしたの?」
なんてとんでもない名前を出してすぐ再び視線を雑誌に向けた。



