桜が咲いたら

あたしには1つ上の兄がいる。






中2の春、借りっ放しになっていた地図帳を返しに3年の兄の教室まで出向いた時、






「持ってくんの、おせぇんだよ」

と、眉間にしわを寄せて怒る兄の向こう側。


教室の真ん中でたくさんの人に囲まれて、楽しそうに笑っていたその人。








運動会や文化祭。


兄のクラスを見に行くといつもいつも中心にその人がいて。






「むさしーー!!!!」


と呼ばれて「おぅ!!」と返事を返すその人。


その声、その名前、その笑顔。








兄の修学旅行のクラス写真には、京都の綺麗な風景を背に、たくさんその笑顔が写っていた。


どうしてそんな風に笑えるのかと聞いてみたくなるような、


無邪気で屈託のない、誰をも魅了してしまう笑顔。