「ごみ捨てだよ。先週出せなかったから、いっぱい出してきた」
真っ赤な鼻で、彼女が にいぃと笑う。

 「ちぃは、牛乳好きだもんねぇ。その割りに ちっさいけど」
もぞもぞと、コタツに入りながら彼氏が答える。

 「遺伝ね!きっと。うちの家族、みんな小さいもの」
ふたりで、並んでコタツに入る。目が合って ふんわりと笑いあう。

暖かいとは、幸せだ。

真っ白な壁に掛けられた、シンプルな時計。電波でソーラーで、半永久的に使えると云う 素晴らしい時計だ。だって、電池交換も 針あわせもいらないのだよ。
電池が切れかかって、ずれまくった時間を見て見ぬふりをしながら過ごした一人暮らしの頃が嘘のようだ。

 その時計に目をやると、時刻は9時ちょっと前。
ぽち!っと、健二がTVのスイッチを入れる。健二は、TVっ子だ。
コタツに入ると 無意識でスイッチを入れてしまうくらい。

TVがつくと、天気予報がやっている。
今日は1日、晴れのようだ。午前中に洗濯をして 外に出せば、夕方には乾くだろう。2日くらい洗濯物を溜めてしまったので、今日は やらないと!

 そう、考えながら時計を見ていると、
 「ねぇ、今日、どうするの?」
健二が、TVを見ながら 声を掛ける。
 
 「どう?って? 何が?」
きょとんとして 千華が答える。

 「予定だよ、予定。 今日の予定」

 「まず、洗濯をします。」
目をつぶって、何かを読み上げるように 千華が話す。

 「ふんふん」
依然、TVを観たまま 健二があいづちを打つ。

 「フレンチトーストを作って食べます。」
 「わあ! いいねえ! 食べたい食べたい!」
キラキラした笑顔で、健二がこっちを向く。

 「洗い物は、けんちゃんがやります!」
千華が そう言うと、
 「やだ~! ヤダヤダ、ちぃがやってよ~」
泣きそうな顔で、健二が懇願する。健二は家事も、一通り出来るが なかなか進んではしない。9対1の割合か、千華が 体調不良の時のみだ。
 
 「ふふふ~」
満足そうな顔で、千華が笑う。千華は イラストレーターで、在宅の仕事なので、自然と家事を担っているが 元々、家事が嫌いではないので 特にストレスは無いが、家事を嫌がる健二の顔を見るのが好きなのだ。

 「も~、やめてよ~!けんちゃんに意地悪するのは~」
健二は、外では 頼れるいい男風をふかせるが、内では 自分の事を“けんちゃん”呼びする 甘ったれだ。
まあ、そういう所が 好きなんだけれど。